皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記の専門家です。
『隣接地の所有者が、境界立会してくれません!』
というのは土地家屋調査士の実務では、頻繁に耳にします。
いわば、これが土地家屋調査士の最大の課題であり、この点を隣接者様にきちんと説明してご理解していただくのが私達の責務であるとも思います。
前回に引き続き、実際にどんな事を言われるのか経験を交えてお話しします。
■面倒くさいから、嫌だ
→ こう言われることは、時折あります。本当にそう思っている場合もありますが、よくよく話を聞いてみると、過去の確執があったり、立ち合いが不安だったり、本当は違う思いをお持ちなのにそれを隠す為に面倒くさいからと言っている場合がよくあります。こういった場合は、親身になってお話を聞き、隣接地の所有者の真意を理解した上で、隣接地の所有者のお気持ちを考えながらお願いをしていくことになります。
■○○してくれないと立ち合いしない。
→ このように立ち合いを行うことに対し条件をつけてくる方がいます。〇〇は様々ですが、かなり無理な条件をつけてくる方もいらっしゃいます。
実際にあった事ですが、相続により土地の分筆登記が必要となり、隣接地の所有者に境界立会を求めた所、元々仲が悪かったせいか、過大な要求を突きつけられました。相続税の納付期間も迫り、隣接地の所有者がかなり強硬な姿勢であった為、やむを得なく依頼主さんはその要求をのみ、境界立会、境界確認書への押印を頂きました。その依頼主さんは、境界確認はお互いの協力関係なのに、交換条件をつけてくるなんてけしからんと当時憤慨していました。その数年後、その依頼主さんから私に電話がかかってきました。今度は隣接地の所有者が土地売却の為に境界立会を求めてきたらしく、その依頼主さんは過去の悔しさを晴らすべく、3倍の要求をしてやったと言われていました。
結局はお互いが嫌な思いをしているので、このようにならないように我々も境界立会はお互いの協力の元に成り立っていることを誠実に伝えないといけませんし、やはり相手にとっては日頃のご近所付き合いの延長線なのかも知れませんので、ご近所との関係は良好なのが望ましいと思います。
■遠方だから、立会は無理です。
→ 隣接地の所有者の土地の相続が発生し、遠方に住むお子様の名義になっている時など、立ち合いをお願いしたい方が遠方にいらっしゃるケースがあります。この場合、連絡を取ることが難しい場合があります。空き家になっていて、相続による所有権移転登記もしていない場合は更に、捜索が難しくなります。直接遠方まで行くこともありますが、何とか連絡が取れたとしても、遠方だから現地に来ることが難しいので、立ち合い出来ませんと言われがちです。通常そんな場合は、現地の近くにお住まいの方に代理で立ち会ってもらう方法、遠方の方に図面や写真を送り資料を元に電話で説明する方法、SNSのビデオ通話機能を使って、現地の動画をリアルタイムで説明する方法など、決して現地に来られなくとも、境界を確認する方法はありますので、遠方の隣接地の所有者が安心できるように対応する必要があります。
色々書きましたが、このようなケースは一部の例であり、通常は快くご協力頂ける方がほとんどです。こちらの説明をご理解頂き、快くご協力頂ける方の為にも誠実に業務に取り組んで行かなければと日々心に刻んでおります。
私自身土地家屋調査士を何年も行っておりますと、隣地との争いでもったいない時間や費用を使い、それに伴い精神的負担を被った方を多く見てきました。土地の境界は基本的には自己管理です。帰省で実家に帰った時など大切な土地を守るという意味で、ご家族で境界について話しをされることもとても大事な事と思います。また、“隣接地の所有者とは仲良く”が色々な意味で良いことだと思います。
お困りの時は、お近くの土地家屋調査士にご相談されてください。